2017年7月2日日曜日

羽化前夜 - 長谷川優貴女流二段を迎えて - 放送後記

棋士は何度か生まれ変わる。力強くなるために生まれ変わる。
生まれ変わらなければ生き残れない勝負の世界。

長谷川優貴は眩い光と共に生まれている。
プロ入りしてから4戦目でタイトル挑戦まで駆け上がるという離れ業を成し遂げた。
才能ある者の集団の中で目立った功績をあげることは容易いことではないし、容易く許してくれる世界ではないのにだ。

それから6年。
彼女は関西の女流棋士においては上から数えた方が早い。まだ21歳であるにも関わらず。
毎年多くの若い才能が現れ、旧世代を脅かす。
だが、若干21歳の長谷川優貴は旧世代とは言い難い。そう、まだ21歳なのだ。


彼女は集合時間よりも幾分早めに現れる。
(ここだけの話、事前に台本を読んでもらったり、当日に早く来て打ち合わせをすることができたのは今回が初めてである・笑)
白いワンピースで夏らしい装いは、休日の高校生のようにも見える。
フレッシュさと不安定さとを両手に抱えているようかのような印象は、未完成という言葉がしっくりくるかもしれない。

放送が始まり、彼女は少しずつ話し始める。
幸い、ここはアウェイではない。東京の地ではあるが同じ女流棋士が運営する教室の中である。集まった客は将棋ファンであり温かく見守ってくれている。
放送終了後は、より気さくに色々なことを話してくれた。その様は、当たり前だが普通に完全に20代女性である。バンジージャンプが好きで、タワーオブテラーを連続で搭乗する普通に完全な20代女性である。

今、長谷川優貴は何かのタイミングを待っているかのように、あるいは何かのきっかけを掴もうとしているかのように思う。生まれ変わるために。
将棋の強さには何が由来しているのか凡人には分からないが、将棋に費やす時間との単純な正比例の関係とはならないようで、不条理を感じる。もしかしたら飛び続けるバンジージャンプの先に何かが見えるのかもしれない。あるいは単なるスリル好きなのかもしれないが。


何かが変わるかもしれない。
その兆しを見逃してはならない。今まさに羽化前夜なのだ。
自ら行動して、その殻を破ろうとする姿はフォームチェンジには留まらずに大きく進化するだろう。

世にも美しい蝶になるか、あらゆる者を打ちのめす毒蛾になるか、
とにかく静かに、でも熱く、長谷川優貴を応援しようではないか。

(文 @totheworld)