2017年3月26日日曜日

内なる秘めた思い - カロリーナ・ステチェンスカ

意外なほどに小柄な彼女は静かにスタジオに現れた。
画面を通して見る棋士は大きく見える。その威圧感、特に対局時に盤にのめり込む姿を見ていると、とてつもなく大きく、遠い存在に思えることがある。
加えて、多くの日本人は残念ながらポーランドに馴染みが薄く、ヨーロッパ人は大柄な女性というイメージを勝手に持っているかもしれない。

カロリーナと@mcmaruyama

小雨の寒空となった東京の朝。羽織って来たコートを脱いでスーツ姿となったカロリーナの襟元には女流棋士のシンボルである駒桜のピンバッジが輝かしく飾られていた。
2017.2.20 貞升女流初段との戦いに勝った彼女は、仮免許と言われる女流3級から正式な女流棋士となる女流2級への昇級を果たしていた。将棋に出会い、将棋を始め、日本に渡って研修会に入り、何度も挫けそうになりながら、それでも諦めないで前進を続けた結果だ。

カロリーナは言葉を選んでから話をする。
上達したとはいえ日本語がネイティブではないので、スラスラと言葉を操れる訳ではない。だが、それが理由ではないような気がする。
元々彼女は思慮深く、軽率な発言はしない性格のように思う。
ちなみに、放送では紹介できなかったが動物占いでは「虎」(ネコ科)である。
(北尾まどかさんは狼)
今回、大きな言葉では言い表さなかったものの、将棋を日本国外に広めていく決意は固めているようだった。

手弁当で運営している虚弱な番組、ねこまど将棋チャンネルではあるものの、生放送という言葉は少々緊張感を伴う。今日のカロリーナも少し肩を強張らせていた。放送時間の30分を終えて、教室内だけのフリートークとなった時には、ほっとした表情と共に笑顔を見せてくれた。20代女性のチャーミングな笑顔だ。

放送終了後は昇級の一番となった一局の自戦解説も行った。
最後は震えたと振り返る。
勝負の世界に足を踏み入れた彼女は、これから何度も震える瞬間を迎えることであろう。その度に強くなり、言葉に重みを持つ棋士となっていく。そして、世界に将棋を広める原動力となるであろう。



カロリーナが好んで揮毫するという「Always do your best!」の色紙を頂いた。
"Always do my best" ではなく、"your (あなたにとっての)" とするところが、カロリーナの心遣い。
「日本語だったら、どんな揮毫にしたいですか?」
と聞いたら、
「風林火山かな?」
と笑って答えた。
「だって私、甲府人だから。」(現在 山梨学院大学 大学院生)

ああ、もう既に日本人の魂を持った棋士なんだと、この時、私は確信した。


「Shogi is my life.」というカロリーナ。
何かに導かれるように将棋の道に踏み込んだポーランド人、その人生。
もう、これだけでこれからの物語が楽しみでしょうがない。
彼女の人生をとにかく祝福したい。だから私からも言いたい 「Always do your best!」


(文 @totheworld)

0 件のコメント:

コメントを投稿